カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

「野ゆき山ゆき海べゆき」(1986年 日本)

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大林宣彦監督の独特の演出に心を奪われます

今朝の1日1映画は映像文化ライブラリーでの名作映画観賞会【映画作家 大林宣彦】で「野ゆき山ゆき海べゆき」(1986年 日本)を鑑賞。

原作は、佐藤春夫の小説『わんぱく時代』。

主人公の総太郎は、年上の少女・お昌ちゃんに思いを寄せ、ガキ大将たちと戦争ごっこを繰り広げる。

尾道や鞆にロケーションし、戦争が影を落とす時代の少年の日々を描く…。

この映画、非商業主義的な芸術作品を製作・配給するATG(アート・シアター・ギルド)の制作なんですが、ATG映画は学生時代レンタルビデオで見まくっていたことがあり、その頃に見たかも、記憶ないけど…という状態で鑑賞。

始まってからしばらくは、戦時中の子供たちによる転校生との喧嘩や戦争ごっこなどが、舞台のような大げさな演技、棒読みのセリフで展開して、むむむ…という感じです。

だけどしばらくして、あ、これはわざとこういう演出なんだということに気づいてから、ぐぐーっとお話の世界観に入ることができ、中盤からはなんかものすごいものを見てしまった感覚にとらわれるという。

寺山修司作品が好きで本や映画を見ていたんですが、この映画、寺山監督の「田園に死す」などのイメージがぽつぽつとありますね。

寺山映画によく出てくるアングラ風の白塗りの子供たちが出てきたり、寺山主宰の劇団・天井桟敷が街全体を舞台としてゲリラ的に演劇を行うように、尾道や鞆の古い町並み全体を舞台として演劇が繰り広げられているような雰囲気もあったりと、かなり実験的。

カメラも固定が多く、フレームの中で手前から奥までに映っているいろんな人々が演技している感じが演劇を見ているようでもあります。

役者さんは懐かしい人がたくさん出ていて、佐藤浩市さんや竹内力さんは別人のような爽やかさ!

モデル出身の鷲尾いさ子さんは、この映画で女優デビュー。

年上の少女・お昌ちゃん役で、影のある役が素敵です。

お風呂でのヌード姿や川でずぶぬれになるシーンはこの世の人には思えないほど儚いし、涙のシーンもキラキラしています。

ラストに向かって戦争に翻弄される人々を通して大林宣彦監督の思い描く反戦というものが色濃く表現されているんですが、結構強烈なインパクトです。

私自身、大林宣彦監督についてまだよく分かってないんですが、素人ながらに感じるのは、何とも言えない不思議な雰囲気があって、とらえどころがないところ魅力なのかなって思ったりします。

常に実験しているというか、何かが新しいというか。

「見ている人をアッと言わせたい」というような好奇心や創作意欲があふれている人だったんだろうなと想像します。

この映画もモノクロ版とカラー版があったり、テレビバージョンがあったりといろんな試みをしているようですね。

35mmフィルムで見る大林監督がとらえた世界は美しかったです。

映像文化ライブラリーに感謝^^

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