「サンドラの週末」(2014年 ベルギー・フランス・イタリア)
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解雇と闘う姿は、静かな「ロッキー」。
手持ちカメラのリアルさ
今朝の1日1映画は「サンドラの週末」(2014年 ベルギー・フランス・イタリア)を鑑賞。
体調不良から休職をしていたが、ようやく復職できることになった矢先の金曜日に、上司から解雇を言い渡されたサンドラ。
解雇を免れる方法は、16人の同僚のうち過半数が自らのボーナスを諦めること。
ボーナスをとるか、サンドラをとるか、月曜日の投票に向け、サンドラは家族に支えられながら、同僚たちを説得に回る。
愛とかすかな希望を抱いて、彼女の長い週末が始まる…。
パルムドールに2度輝く世界の名匠、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌによる人間ドラマです。
静かに進むこの映画。
以前同じような題材で、非正規雇用者全員に一方的な「解雇通達」が下され、大企業と闘う韓国映画『明日へ』(2014)を見たことがあり、あれは仲間と一致団結してストライキして戦うぞ!という組合系の群像劇だったんですが、こちらはとてもパーソナル。
一人ずつ同僚の家を訪ね、私に投票してほしいとお願いしていきます。
撮影は、手持ちカメラで主人公を追っていて、わりと長回しなので、鑑賞者の私たちはカメラマンの目線と同化し、その場に居合わせているような臨場感があります。
状況を盛り上げるための音楽はなく、唯一あるのは車でラジオか何かから流れている音楽。
その歌詞は主人公の心情にマッチさせてあります(こういう演出、よく見ますね。効果的)。
主人公はうつを患っていて、完治したはいえ、また薬を飲みつつ一軒一軒訪ねて回るんですが、門前払いもあれば喧嘩もあり、それぞれの家庭事情も垣間見れ、結構しんどい思いもします。
もうね、観ながら、やめてもいいんだよ、楽になってもいいんだよ、って見守りながら見てる感じ。
夫がまためちゃめちゃいい人で妻であるサンドラを支えるんですよねー。
そんなサンドラの地道な行動がどうなるのかとラストまでドキドキします。
この映画、非常に地味で静かではありますが、その熱量はボクシング映画の名作『ロッキー』(1976)のよう。
『ロッキー』はタイトルマッチに勝つという目標はあるものの、その過程は自分との闘いを描いてあるんですよね。
サンドラも投票に勝つという目標はありますが、その過程で自分に打ち勝つという、一人の女性の成長が描かれています。
監督の国であるベルギーがロケ地なのかどうかわからないのですが、建物や衣装の配色が素敵で、淡いブルーとエンジ、グリーンにサーモンピンクなど、反対色をうまく組み合わせた美術に目が行きます。
ラストのエンドロールは音楽無し。
自分がもし同じ立場になったら、と思わせてくれるリアリティーがあり、考えさせられる映画です。
↓予告編