『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年 アメリカ)
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「私たちは編集なしで私たちの生活を送っている」。
1回の長回し撮影のような、演劇的&鳥的世界観にシビレます!
今朝の1日1映画は「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年 アメリカ)を鑑賞。
20年前にヒットした映画シリーズ、今も世界中で愛されているスーパーヒーロー“バードマン”。
だが、バードマン役でスターになったリーガン(マイケル・キートン)は、その後のヒット作に恵まれず、私生活でも結婚に失敗し、失意の日々を送っていた。
実力派俳優、厳しい批評家、離婚した妻、娘との溝は深まるばかり…。
『バベル』などのアレハンドロ・G・イニャリトゥが監督を務め、落ち目の俳優が現実と幻想のはざまで追い込まれるさまを描いたブラックコメディー。
人気の落ちた俳優が、ブロードウェイの舞台で復活しようとする中で、不運と精神的なダメージを重ねていく姿を映します。
アカデミー賞作品賞ほか最多受賞。
見終わってまだ余韻がすごい…。
なんなんだこの映画はーっ!
この映画の技術的な特徴は、「ステディカム」。
1975年にギャレット・ブラウンが発明した、空間全体を自在かつなめらかに動ける機材で、手持ちカメラに装着すると、手振れがないどころか、まるでカメラが宙に舞っているような映像が撮れます。
それを映画全編に使い、あからさまにカットを切らず、まるで映画の最初から最後まで1カットで撮っているように仕上げてあります。
この方法で撮影する理由は、監督の「私たちは編集なしで私たちの生活を送っている」という思いから。
映像はなめらかに進み、カメラが人物を追うのに加え、動くカメラに人物が入り込んできて演技をするという、ヒッチコックの「裏窓」のような、計算された動きを必要とします。
普通の映画に比べて相当綿密な計画を練らないと撮れないこのスタイル。
ステディカムオペレータのクリス・ハーホフは、会話にかかる時間を計測し、キャストの動きのマップを作成。
マップ通りに動いて演じてもらうというリハーサルを行いました。
オペレータの高度な技術無しではできない映画です。
ステディカムの映像効果は「まるで夢の世界のよう」な、非現実的な映像になること。
この映画は現実世界と主人公の空想や妄想が行ったり来たりする場面が展開するんですが、それがステディカムによって彼の頭の中をのぞいているかのような密着感や共感が生まれ、彼の苦悩を共有できるんですよね。
演劇の舞台を追った劇中劇で、夢の中のような、鳥になって飛んでいるような、ふわっとした映画でもあるので、何が言いたいの?と結論が知りたい人には評価が分かれるところもあるんですが、私はこの世界観はすごく好きです。
主役のマイケル・キートンの演技は渋いし、映画的には構成は基本的で分かりやすいし、盛り上がり方も緩急あっていい。
あと印象的なのが音楽。
ジャズドラムのソロがずっと流れていて、その奏者も映画に現れたり。
華美な音楽で盛り上げるのではなく、不安定なビートっていうのが主人公の気持ちにマッチしています。
演劇的でありつつも、映画にしかできない表現で非現実な世界に行ける、他にあまりない作品です。
↓予告編