「潜水服は蝶の夢を見る」(2007年 フランス)
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身体的自由を失った「ELLE」の元編集長。
リアルで詩的な映像美。
今朝の1日1映画は「潜水服は蝶の夢を見る」(2007年 フランス)を鑑賞。
ファッション誌「ELLE」(エル)の編集長として活躍する人生から一転、脳梗塞(こうそく)で左目のまぶた以外の自由が効かなくなってしまった男の実話を映画化。
睡(こんすい)状態から目覚めたものの、左目のまぶた以外を動かすことができない「ELLE」(エル)誌編集長ジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)。
意識ははっきりしているにもかかわらず言葉を発することができない彼に、言語療法士のアンリエット(マリ=ジョゼ・クローズ)はまばたきでコミュニケーションを取る方法を教え…。
見終わって、今、ちょっと言葉にならないくらいの思いをこの映画から受けています。。
これほど主人公の気持ちになれる映画はないくらい。
まず、この映画の視点。
頭では考えることができてもしゃべれず動けずという主人公の目線がカメラの視点となって(POVショット)、主人公が見えている風景を、我々観客も同時に体験しながら映画が進みます。
それがもう自分が麻痺で寝ていて介護を受けている錯覚に陥るぐらいのリアリティーのある捉え方で、瞼や涙の表現も忠実に再現。
思ったことをしてもらえなかったり、それ違うんだよなってツッコミを入れたりという心の声も面白い。
私は祖父が同じような状態だったので、あの時ああやってコミュニケーションを取っておけばという後悔と、自分が将来こういう身体になってしまったら…と考えずにはいられません。
またフランスの医療体制がすごい。
一人の患者に何人もの介護士が付きっ切りでリハビリをしたり、献身的に忍耐強く瞬きで1文字1文字拾っていき、会話や文章をつづっていったりする姿に感銘を受けます。
それから詩的な映像。
それまでファッション業界の華やかな世界で生きてきて、家族や愛する人との幸せな日々が突然、病気になってどうしようもなくなる。
くやしさでいっぱいですが、そんな中にも前向きに自分の中で生きていく答えを見つけるボビー。
その内的世界を表現するのが、詩のような哲学的な独り言(しゃべれないので)の数々、フラッシュバックのようにインサートされる過去、妄想、イメージ映像。
人間、身体が不自由になっても、周りのサポートや物事の捉え方で内面から自由になれるということがどんなに救いがあるか!
その他、周りの愛する人々の変化、親が子を看るということなども描かれています。
フランス映画だけに美術のカラーコーディネートも素敵。
介護する人の映画はよくありますが、介護される側の気持ちがこんなに手に取るように分かる映画はないんじゃないかと思います。
見てよかったです。
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