『嵐を呼ぶ男』(1957年 日本)
画像:リンクより
この映画で人気の頂点に。
石原裕次郎や北原三枝を通して楽しむ青春歌謡映画
今朝の1日1映画は『嵐を呼ぶ男』(1957年 日本)を鑑賞。
女流敏腕マネージャー・美弥子(北原三枝)に見出されたドラマー・国分正一(石原裕次郎)。
美弥子の厳しい指導と猛練習でメキメキと力をつけていく。
やがて二人の間にも淡い恋心が芽生えていた。
しかし作曲家志望の弟・英次(青山恭二)が新人リサイタルに推薦されることになり、美弥子に恋心を抱く評論家・左京(金子信雄)の力が必要となる。
仕方なく、正一は美弥子から離れる決心をしたのだが……。
美しい兄弟愛を中心に、ドラマーを目指す若者の熱い姿を描いた、自身の作品を脚色(西島大との共同)・監督した井上梅次による石原裕次郎主演の青春歌謡ドラマです。
ストーリーとして冷静にみると、主人公は結構かわいそう。
まあ、弟の成長と対比的・皮肉的に描かれるので、それはそれでしょうがないんですが。
水の江瀧子プロデューサーが石原裕次郎を見つけ出し、『太陽の季節』『狂った果実』(共に1956年)の太陽族映画で人気者となり、この『嵐を呼ぶ男』でその人気は頂点に。
当時、ドアが閉まらないほど超満員の映画館で石原裕次郎作品を見るという状況で、見る方もかなり体力勝負な面があったようですが、くたくたになって帰路に着くのもいとわないくらい、若者たちに新しいエネルギーを届ける存在でした。
今でいうとプレミアチケットの人気バンドや声優、アイドルのライブみたいな感じですかね(コロナ禍前の)。
その人気からいろんなプロデューサーからどんどん声がかかり、B級、C級のアクション映画にもどんどん出続け、身も心もズタズタになりながら撮影。
当時売れっ子俳優は年間12~3本の映画に出ていた時代で、市川雷蔵享年37歳、美空ひばり享年52歳、そして石原裕次郎享年52歳。
超人気スターの早世は過労が原因のような気もしますよね…。
そんな時代を象徴するスター裕次郎がこの映画ではキラキラしていて、成功者の象徴ともいえる銀座のきらびやかなネオン街を夢見て、狭いアパートから成長していくドラマーとしての姿が映し出される。
朝食はパンとコーヒーやミキサーで作るフレッシュジュース。
いろんな種類の観葉植物や花が置かれたモダンな部屋。
色とりどりのさまざまなスタイルのスーツやワンピース、舞台衣装を着こなす登場人物たち。
若い子たちが、石原裕次郎や北原三枝を通して、自分たちもこんな生活がしたいと思わせられる、高度経済成長期の夢が詰まった映画なんですよね。
そういう歴史的背景を知ると、この映画から当時の日本の様子が見えてきて面白いです。
また、「ジャズ歌手部門」での人気投票があるなど「ジャズ」が浸透していた時代なんですかね。
確かに、美空ひばり、弘田三枝子、雪村いづみなどは歌謡曲や演歌も歌っていたけどジャズも歌っていて、ジャズ歌手というカテゴリーにも入るっぽいし。
この映画に出てくる音楽は、ジャズといいつつも本格的なものは少なくて、ポップ、ライト・ロック、スウィング、バラード、モダン・クラシックな雰囲気のものが使われています(平尾昌晃のロカビリーもありますが)。
石原裕次郎の声は甘くて切なく、激しいドラムには合わない感じがあるんですが、ドラムをたたきながらあの声でいきなり歌うシーンは雰囲気をガラッと変える効果があって、あれはあれでアリですね。
昭和30年代のモダンな雰囲気を堪能できる映画です。
PS:渡哲也さんや近藤真彦さん主演でリメイクされているんですね。そっちもいつか見てみたいです。
↓予告編
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