カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『細雪』(1983年 日本)

岸恵子佐久間良子吉永小百合古手川祐子主演。
言葉にならない心の機微をカメラでとらえる。

今朝の1日1映画は『細雪』(1983年 日本)を鑑賞。

昭和13年

戦争の足音が近づく大阪・船場の名家、薪岡家の四姉妹。

三女雪子の縁談の話や四女妙子の奔放な言動など、何かと騒々しい日々を送っていた。

そんな折り、長女鶴子の夫、辰雄が勤め先の銀行から東京転勤の辞令を受ける。春の1日、京の桜の下で遊んだ四姉妹に別れの日が近づくが…。

谷崎潤一郎の原作を、大阪や京都を舞台に市川崑監督が叙情詩的な映像でつづる映画です。

何度も映画されている『細雪』の1983年版なんですが、昔職場の先輩がこの映画にハマっていて、映像文化ライブラリーで上映があるたびに観に行っていたのを思い出します。

今回見て、その美しさとともに、映画としてすごく勉強になるなーって。

まず、お話自体の面白さ。

「家」や「親の遺産」と、守らなければならないものがある名家を舞台にした内容は、先日見た市川崑監督『犬神家の一族』と似ていて、生まれながらにしてすでにそれらをめぐる姉妹内や自身との「葛藤」があり、映画は葛藤を描くものと考えると非常に映画的なんですよね。

そして4姉妹いれば、4つのエピソードが描けて、お話も膨らみますし、養子の夫も含め、鑑賞者は登場人物の誰かに共感することができます。

次に演技。

主軸は主役ともいうべき3女の雪子(吉永小百合)。

主役って、お芝居でも映画でも、そこまで華美な演技やこと細かにセリフを言う必要はなくて、どちらかというと周りの事象に巻き込まれていき、やがて自分の答えを見つける、という存在だと感じるんですが、吉永さん、これがもうぴったり。

セリフが少なくて何を考えているのかつかめない役なんですが、セリフにならない気持ちを、表情のアップで魅せてるんですよね。

それからセリフを補うカメラワーク、奇をてらった照明。

吉永さんの演技って言葉ではなく、「表情」なんだなと思うんですが、それをアップによって目の動き、首の傾げ方、細かーい部分一つ一つを見せるカメラワークによってなんともいえない奥ゆかしさを表現してあって、さすがと思いました。

古の京都や大阪の雰囲気が、庭園以外の外ロケは少なく、室内でのシーンがほとんどですが、原色の照明が何度が出てきて、写真の現像室の暗室での「赤」、病院での「赤」や「紫」、バーでの「緑」などちょっとアバンギャルドな雰囲気を醸し出していてハッとさせられます。

斜め構図、ホイップズーム、手だけのアップなどを伏線にも用いられていて、印象に残るんですよね。

音楽がシンセサイザーだったり、4女がしている髪留めが映画が撮影された80年代に流行したものだったりと、時代的に相違はあるんですが、83年公開時に見る人は時代性を取り入れていてきっと違和感なく見れているんだと思います。

女性の生き方で言うと、何度もお見合いを繰り返す三女雪子(吉永小百合)の生き方も80年代公開時には主流だったでしょうし、自由奔放に生きる四女妙子(古手川祐子)も現代の女性にリンクしていて。

石坂浩二のうちに秘めた恋心も泣けます。

よく見に行っていた先輩の気持ちが分かりました。

今見ても非常に共感できる映画ですね。

おすすめいただきありがとうございます。

PS:お見合い相手の父親役の常田富士男さん、日本昔ばなしの声優として有名ですが、生前インタビューさせていただいたことがあります。

おだやかな、紳士的な方でした。

↓予告編

 
 

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