カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『メイド・イン・USA』(1967年 フランス)

By FDB, Fair use, Link

「映画の観客は騙せても、私は騙せないわ」(映画より)
ゴダール監督による不条理クライム・ミステリー&コメディー

今朝の1日1映画は、昨日亡くなったジャン=リュック・ゴダール監督の『メイド・イン・USA』(1967年 フランス)を鑑賞。

ヒロインの記者ポーラ・ネルソン(アンナ・カリーナ)のもとに、昔の恋人からの知らせが舞い込んだ。

彼女はさっそく現地に赴くが、その時には既に恋人は死んでいた……。

フランス秘密警察の汚職事件をもとに、リチャード・スタークの小説『悪党パーカー/死者の遺産』を映画化。

彼女について私が知っている二、三の事柄』と同時に撮影された ジャン=リュック・ゴダール監督によるクライムミステリー&コメディーです。

うわー、これは実験的&皮肉的。

のっけから、赤、白、青のフランス国旗&アメリカ国旗の3色でデザインされたタイトル文字が目に飛び込んでくる。

壁に赤い字や青い字で書かれた「自由」の文字に、撃ち込まれる弾丸。

「戦争は終わってない…次々と場所を変えて続いている」などの社会的なセリフの数々。

大筋は「元恋人を殺した犯人を捜す」なんですが、いろんな人が彼女の前に現れ、歌ったり、タイプライターで政治的なメッセージを打ったり、間接的にいろんな哲学的なエピソードが挟み込まれたりする。

それらがドリフで言う所の“すわ親治”的な(よしもとで言う所の“野生爆弾”的な)、オーソドックスなギャグの間にシュールな笑いを挿入して、なんだか分かんないけど場の空気をシュールな方が全部持っていくのと同じような効果を持たせてあって。

ストーリーよりもカラフルな色のインパクトや政治的・哲学的メッセージが記憶に残るんですよね。

トータルで見ると、ポップでスタイリッシュでかっこよくて、全体として見た時につかみどころがあるようでないけど、時代を象徴していて新しいよねという。

寺山修司の『書を捨てよ町へ出よう』(1971年)のような空気感があります。

それまでのフィルムノワール(犯罪映画)と言えば、「黒」、そして「影」。

でもこの映画は「カラフル」で「明るい」。

殺し屋といえば「銃をもったトレンチコートの男」。

でもこの映画は「銃を持ったトレンチコートの女の子」。

真っ赤な血に染まった人の流血シーンでさえ、ポップ&ギャグに見えてくる。

まさに「血塗られたディズニー映画」という言い回しがピッタリきます。

個人的に印象的だったのはラストシーン。

濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』(2021年)での象徴的なシーンのようなワンシーンがあって美しいです。

技法は斜めショットやカメラ目線も印象的ですが、場所がどこだろうと、そんなことはどうでもいいくらいアップショットを多用。

美しいアンナ・カリーナの表情を眺める映画でもあります。

ジャン=リュック・ゴダール監督、91歳というと市川雷蔵さんの1つ上だったのですね。

これからも映画は永遠に生き続けて人々の心を動かす。

ご冥福をお祈りします。

↓予告編

 
 

↓何回も見ることができるのもゴダールのいいところ。

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『花の兄弟』(1961年 日本)

当時18歳の橋幸夫市川雷蔵と共演。
殺陣に、恋に、歌いまくる!

今朝の1日1映画は『花の兄弟』(1961年 日本)を鑑賞。

父の仇討ちという使命を背負わされた兄・市之進(市川雷蔵)。

一方、武家を嫌ってやくざの世界に飛び込んだ弟・新次郎(橋幸夫)。

生き別れになっていた二人が、因縁の運命のもと再会する。

弟の腐り果てた姿に激怒する市之進と、兄の悲壮感溢れる忠実さを笑う新次郎。

しかし皮肉にも市之進はやくざ修行をするハメになり…。

市川雷蔵橋幸夫の共演2作目となる1961年12月27日にお正月映画として公開された歌謡時代劇コメディーです。

監督は池広一夫、脚本は東宝の「社長シリーズ」でお馴染みの笠原良三

潜入して敵討ちをするスパイ的要素、韓国ドラマでよくある契約恋愛的な要素、魅せる殺陣に唄って踊ってのエンターテインメント要素がギュッと盛り込んであります。

また、時代劇といってもコミカル&現代風にアレンジされていて、市川雷蔵が「なんじゃそりゃ」とツッコミを入れ、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」が流れるわ、大映映画なのに東宝映画の「スーダラ節」を歌いだすわと見ていて楽しい!

当時市川雷蔵30歳、橋幸夫18歳。

来年5月で引退という節目を迎えられた現在79歳の橋幸夫さんですが、この映画の姿ははにかむ笑顔やその立ち振る舞いがもう初々しくて。

でも歌いだすシーンではガラッと雰囲気が変わり、めちゃくちゃうまくてそのギャップがいいですね。

この2人、よく似ていると言われていて、市川雷蔵は一回り離れた橋のことを弟のようにかわいがっていたそうで。

雷蔵さんは橋さんに花柳界を案内し、京都の知人の仲居を橋家のお手伝いさんに紹介したり、橋のワンマンショーにかけつけたりもしていたそう。

一人っ子だった雷蔵さんだけに、弟ができたようでうれしかったんでしょうね。

画的には左右に同じような構図を置く対のイメージが。

兄弟という対となる人物が主人公なので、画としても対をイメージしている気がします。

現在の映画はリアルを追求するのが主流のような気がしますが、その対極のようなこんなお祭り的な華やかな雰囲気の映画は見ていて癒されますね。

 
 

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『劇場版 フランダースの犬』(1997年 日本)

この悲劇、日本的。

今朝の1日1映画は『劇場版 フランダースの犬』(1997年 日本)を鑑賞。

19世紀のベルギー、フランダース地方。

アントワープにある大聖堂を、一人の修道女が訪れる。

彼女は、聖堂に飾られている大画家ルーベンスの「聖母被昇天」を仰ぎ見るうち、その記憶は20年前へとさかのぼる。

おじいさんと牛乳運びで生計を立てる少年ネロと愛犬パトラッシュは、貧しいながらも幸せに暮らしていた。

ネロの夢はルーベンスのような画家になること。そんなネロのささやかだが幸せな日々は長くは続かなかった…。

75年にフジテレビ『世界名作劇場』で放送され多くの視聴者に感動を与えた、少年ネロと愛犬パトラッシュの友情を描いた物語を、構想も新たに劇場版としてリメイクした長編アニメーションです。

ラストシーンのみがいろんな番組で取り上げられる機会が多いですが、全体的なお話はどうだったのかなと思い劇場版を鑑賞。

うん、やはりあの有名なラストシーンで朝から泣けます。

改めて見ると、これでもか!というほどの悲劇の連続…。

普通は映画の構成として、どんなにつらい状況の主人公にも楽しいひと時というのが20分ぐらいあるものですが、この映画にはほんの僅かしかなく、悲劇が5分置きぐらい頻繁に主人公に降りかかる。

悲劇も後半になるにつれだんだん大事(おおごと)になっていくので、いわれなき罪などその理不尽さに見ている方もフラストレーションがたまっていきます。

主人公は貧しくとも心優しき非力な少年。

悪い奴らが改心し、ネロをを救おうと思った時には、時すでに遅しという。

主人公が大人だったり精神的に強い子だったら敵を倒したり自力で跳ね返していくんだと思うんですが、ネロはそういうタイプの子ではないので、あのラストシーンは、一見バッドエンドのようですが、やっと苦難から解放されるというハッピーエンドなんだなぁと思わされる。

あの時、近所のおばちゃんに助けてもらえたらこんなことには…という、社会には手を差し伸べるべき人がいるということを改めて思い知らされます。

日本では絶大な人気のこの作品ですが、イギリス文学である原作の知名度はそれほど高くないうえ、内容も評価されていなかったそうで。

考えてみると、こういう身分や貧富の差を描いた悲劇って日本の物語には多い気がするんですよね。

ちょっとパターンは違いますが、江戸時代の許されざる恋を描いた『曽根崎心中』『近松物語』などの「心中もの」などもそういう部類ではないかと。

この映画も、愛犬パトラッシュを、ネロの幼馴染みで身分の高いお嬢様アロアに置き換えると、身分差により会う事を禁じられた男の子と女の子が、追い詰められたあげく天国ともいえる憧れの場所(教会内のルーベンスの絵の前)で天国に行くという。

心中ものと似た観点の作品としてとらえるとしっくりくるし、なぜ日本で愛されたのかが分かる気がします。

大人になって見ると、特殊能力を身に着けたスーパーヒーローの正反対ともいえる、社会や時代に立ち向かえなかった少年の悲劇に、改めてグッとくるものを感じますね。

PS:絵描きのアイク役の声を元フジテレビアナウンサーの露木茂さんがやっているんですが、しゃべり方がアナウンサーのしゃべり方でちょっと面白いです。

 
 

↓これぞ日本の悲劇。

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『ワーズ&ミュージック』(1948年 アメリカ)

By The poster art can or could be obtained from the distributor., Fair use, Link

華やかなミュージカルシーンに胸躍る!
ミッキー・ルーニーの迫真の演技も。

今朝の1日1映画は『ワーズ&ミュージック』(1948年 アメリカ)を鑑賞。

1930年代から40年代にかけて作曲家リチャード・ロジャース(トム・ドレイク)と作詞家ロレンツ・ハート(ミッキー・ルーニー)は共作し多くの名曲を生み出した。

彼らがコンビを組み、やがてハートの悲劇的な死でその幕を閉じるまでを、様々なエピソードを交えながら描く。

今ではスタンダード・ナンバーになっている名曲の数々が全編に散りばめられているミュージカル映画の名作です。

監督はのちにディーン・マーティンジェリー・ルイス主演の「底抜けシリーズ」やエルヴィス・プレスリー主演『ブルー・ハワイ』を手掛けたノーマン・タウログ

先日見た『真夏の世の夢』(1935年 アメリカ)で子役ながら振り切った演技が印象的だったミッキー・ルーニーが出演していると教えていただき見てみました。

この映画撮影時はミッキー・ルーニー28歳。

『真夏の世の夢』の時は15歳だったので、もうすっかり大人になっています。

ミッキー・ルーニーは身長が157cmで、この映画で演じた作詞家のロレンツ・ハートも150cmぐらいだったということで、その特徴を生かした配役になっていて、壁に身長の印をつけるシーンが印象的。

やっぱりこの人上手いなーと思ったのは、入院していてふらふらだけど劇場に向かわなきゃと、ベットから這い上がってパジャマの上からスーツを着込んで出かけるシーン。

具合が悪くてフラフラな時の歩き方から、壁に寄りかかりながらなんとか服を着る様子がもう本当の病人のようにリアルで。

メソッド演技っていうんでしょうか、おそらくミッキー・ルーニーは作詞家ロレンツ・ハートに心底なりきって演じていたんじゃないかと思います。

ストーリーとしてはロレンツ・ハートの心の内にいろんな変化があって、うつと闘ったりするんですが、ストーリーを見る映画というよりは、華やかな音楽とミュージカルシーンを中心につながれていて、それを楽しむ映画ですね。

映画の舞台は1920年代~40年代なんですが、撮影・公開されたのは1948年。

フルカラーで、当時の衣装やヘアメイク、舞台セットが現れ、色とりどりの衣装を着たキャスト達がバレエからタップダンスまでを歌や音楽とともに繰り広げるのが圧巻で。

オズの魔法使』の子役で大スターになったジュディ・ガーランドも本人役で出演しています。

ミュージカルの楽曲で「ブルー・ムーン」は聞いたことなるなと思ったのと、ミュージカルシーンではない各シーンのバックに使われている音楽が感情に沿った効果的な音楽で、まるでアニメ「トムとジェリー」の音楽のよう。

考えてみたら、「トムとジェリー」の初期シリーズって1940年代なんですよね。

どおりで。

1940年代に、こんなに華やかなエンターテイメント映画が作られていたアメリカ。

今見てもワクワクしますね。

↓予告編

 
 

ミッキー・ルーニー、15歳の時の演技がすごすぎ↓

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『NOPE』(2022年 アメリカ)

https://www.themoviedb.org/t/p/w300_and_h450_bestv2/ahanyay0OxJv281ag6XvaZzaMaX.jpg

見た目はシンプルだけど中身はモリモリ
初めてIMAXカメラで撮影されたホラー映画

今日の1日1映画は『NOPE』(2022年 アメリカ)をU-NEXTのポイントで鑑賞。

舞台は南カリフォルニア、ロサンゼルス近郊にある牧場。

亡き父から、この牧場を受け継いだOJだが、半年前の父が事故死。

飛行機の部品の落下によるものだとされた。

しかし、OJはこの事故の際に一瞬目にした飛行物体を忘れられずにいた。

牧場の共同経営者である妹エメラルドはこの飛行物体を撮影して、“バズり動画”を世に放つことを思いつく。

やがて起こる怪奇現象の連続。それらは真の“最悪の奇跡”の到来の序章に過ぎなかった……。

ゲット・アウト」「アス」で高い評価を受けるジョーダン・ピールの長編監督第3作です。

『ミナリ』(2020年 アメリカ)のスティーブン・ユァンが出ているということで鑑賞。

映画の構成としては、前半と後半はものすごいインパクトがあって(ちょっと中だるみはあるんですが)、見終わって爽快感が。

登場人物が少な目で見た目はシンプルなんですが、中身は結構モリモリでいろんな要素を含んだ映画ですね。

エピソードが数種類あって、不可思議なことをミステリーのように紡ぎながら進む部分と、「あいつから逃げろ!」という分かりやすいホラー的な部分、そして、黒人が映画に関わってきた歴史について。

コロナ禍に生み出されたというシナリオには、人類が避けられない悲劇が盛り込まれ、隠喩や宗教的・歴史的モチーフと思われるものが多用され複雑性があってちょっと難しいんですが、どう解釈するかで面白さに深みが出そうな感じがします。

だけど、単純にホラーとして見ることができる映画でもある。

初めてIMAXカメラで撮影されたホラー映画ということで、音の迫力がものすごいんです!

私はIMAX上映で見たかったんですが、時間が合わず普通の上映で見たんですが、それでも体中にドーンと響く感じだったので、IMAX上映で見るともっと圧倒的なサウンドシステムで没入できると思います。

ネタバレもあまりしない方がいいと思うのでこのくらいで。

PS:個人的には夜のシーンをどうやって撮ったんだろうなと。影を見るとくっきりあるので、日中に撮ってフィルターや編集時に加工してる感じなんですが、これまでにあまり見たことのない印象的な闇が表現してありました。

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『エリザベス2世 知られざる女王の素顔』(2013年 イギリス)

英国女王エリザベス2世の半生を、貴重な映像とともに紐解くドキュメンタリー

今朝の1日1映画は『エリザベス2世 知られざる女王の素顔』(2013年 イギリス)を鑑賞。

8日に英エリザベス女王が96歳で死去されたんですが、私自身、エリザベス女王についてほとんど知らないことに気づかされまして。

あの女王の目と口をふさいだデザインのジャケットで有名なセックス・ピストルズゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」のTシャツは昔持っていた気がする程度。

勉強の意味で見てみました。

この作品は、2016年4月21日に90歳の誕生日を迎え、盛大な祝賀行事も控えるエリザベス2世の半生に迫ったドキュメンタリー。

ダイアナ妃の事故死やウィリアム王子とキャサリン妃の結婚にも触れながら、映画『クィーン』でエリザベス女王を演じた女優ヘレン・ミレンや王室の元執事、エリザベス女王のいとこ等のインタビュー、幼少期から現在に至るまでの貴重な映像などから、彼女のこれまでの人生を紐解いています。

1940年代の貴重なフィルムや昔の姿が見られるのはNHKの「映像の世紀」みたいでいいですね。

25歳で王位の座に就いて、3男1女をもうけ、これまで公務を優先して務められてきた姿を知ることができます。

結婚したフィリップ・マウントバッテン大尉がかつて亡命生活をしていたとか、ダイアナ元妃の事故とか、女王の周りは結構波乱万丈。

だけどエリザベス女王だけはいつも毅然としていて、国民に笑顔を見せ滞りなく式典などの公務を行うという揺らがない姿があって、軸みたいなイメージがあります。

国民の前では、一番ゆっくり歩いて人々に笑顔を向けることを心掛けていたそう。

内面ではいろんな感情があったとは思いますが、実際の感情を表に見せずミステリアスさを保つことが、国民を長く王室へ興味を抱かせ続けている秘訣なのかもしれないですね。

約1世紀をその時代とともにたどれる作品です。

ご冥福をお祈りします。

PS:壮大な式典の時はダイヤモンドなどの宝石類を付けていますが、普段の公務の時には常にパールのジュエリーを付けていらして、パールの持つ「気品」を改めて教えられます。私もデイリーアクセサリーに取り入れたいなぁ。

↓予告編

 
 

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『羅生門 デジタル完全版』(1950年 日本)

https://m.media-amazon.com/images/I/71p5jrR7OKL._AC_SY445_.jpg

ミニマムな世界観のなかに、多くの引き出しがある名作。

今朝の1日1映画は『羅生門 デジタル完全版』(1950年 日本)を鑑賞。

平安時代、都にほど近い山中で貴族女性が山賊に襲われ、供回りの侍が殺された。

やがて盗賊は捕われ裁判となるが、山賊と貴族女性の言い分は真っ向から対立する。

検非違使は巫女の口寄せによって侍の霊を呼び出し証言を得ようとする、それもまた二人の言い分とは異なっていた……。

原作は芥川龍之介の短編「藪の中」。

世界にクロサワの名を知らしめた歴史的作品です。

超名作ですけど、なんだか難しそうだなと思って見てなかったんですが、ああ、こういうことかと。

構成は、山の中で事件に出くわした4人が、法廷の前で証言をしていくサスペンス。

その証言が4人でまったく食い違っているという。

人間の欲や、人を信じることを描いてある。

あとは自衛のための嘘とか。

決して複雑ではなく、人間の本能的・原始的な欲求をシンプルに描かれていて。

人間の心理を描いた、学びの多い映画ですね。

登場人物は最少人数、ロケ地最小限で本当に低予算で作られたこの作品。

その分技法は工夫がいたるところにあって興味深い。

白黒映画ですが、コントラストの強い光と影が印象的で、太陽にカメラを向けるというそれまでタブーとされていた撮影もこの映画が最初。

構図も宮川一夫カメラマンによる絵画のような美しさが。

演技は感情の変化度合いのふり幅が半端なくて、泣いていたと思ったら次の瞬間大声でハハハと笑うなど、見ていてびっくりしてしまいます。

あとリアルを追求している部分は、髪の生え際が地毛で、鬘じゃないんですよね。

ほつれ毛やアホ毛が出ていて。

チャンバラシーンも今だと刀の「カキーン」「シュッ」っていう効果音がバリバリについていますが、そのものの音で(そういう効果を付ける以前の映画ではありますが)。

いわゆる計算された殺陣の立ち回りではなく、本当に刃物を向けられておびえている人の様相を演じていて、リアリティーがあります。

そして音楽。

前半、まるでラヴェルの「ボレロ」のような曲が流れ、各人物の証言の間に回想シーンが挿入されるんですが、あの後半に向けてだんだんボルテージが上がっていく音楽が、事件を思い浮かべながら自一人語り(証言)をしていくうち、自分の中で盛り上がって、物語を作り上げていっているんじゃないかと思うような様子があり、演技を盛り上げていてマッチしているんですよね。

ミニマムだけど、想像力を刺激してくれて、引き出しが多い。

そこが名作たる所以なんでしょうね。

この映画で世界のクロサワになった理由が分かります。

PS1:この修復されたデジタル完全版、すごくきれいで、72年前の映画とは思えないくらい。三船敏郎が、森雅之が、京マチ子が今生きていて活躍しているような錯覚さえしてきます。

PS2:夏に京都に行ったときに、『羅生門』がヴェネツィア国際映画祭で受賞した金獅子賞(グランプリ)のトロフィーのレプリカが大映京都撮影所跡地にあると聞いていたんですが、見つけることができず…。帰って調べてみると、跡地の碑の横の校門を挟んで反対側にあったのみたいで。すぐそばまで行っていたのにね…。その時の記事です↓

↓予告編

 
 

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