『血を吸うカメラ』(1960年 イギリス)
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カルト映画として再評価された
ヒッチコックの『サイコ』と並ぶ、サイコ・スリラーの原点
今朝の1日1映画は『血を吸うカメラ』(1960年 イギリス)を鑑賞。
心理学者の息子であるマーク(カール・ベーム)は幼い頃、恐怖が人間に与える影響について、父親から絶えず実験をされていた。
度重なる実験は、マークを次第に狂気の淵に追いやっていった。
やがて成長したマークは、女性の表情をカメラに収めることに執着するようになる。
そしてついには、死の間際の表情を撮りたいと熱望するに至る……。
『赤い靴』『黒水仙』などで知られるイギリスの巨匠マイケル・パウエル監督が1960年に発表したサイコスリラーです。
原題は『Peeping Tom(ピーピング・トム/覗き屋トム)』。
昔、芸人さんでそういう名前のコンビがいたなぁという思いつつも顔や芸風は記憶が蘇りません(笑)。
マーティン・スコセッシ監督の好きな映画のひとつとしても知られる作品。
これは確かにマニアック。
だけど、冒頭から引き込まれ、最後まで興味深い。
ヒッチコックの名作『サイコ』と並んで、“イギリス版サイコ“と呼ばれて公開当時は物議を醸していましたが、近年カルト映画として評価が上がってきた作品。
時代が追い付いてきたってことなんでしょうか。
日本のタイトルだと、カメラが血を吸いそうなホラー映画っぽい雰囲気がありますが、そっちではないですね。
見た目は普通の紳士な男性が、実は性的倒錯があって…という展開。
「人は見た目が9割」って言いますが、このイケメンさんかつ誠実そうな見た目だったら、私でもあまり疑いもせず近寄りそうです(苦笑)。
でも人間、本性は「行動に表れる」。
いつも8mmカメラを肌身離さず、場所的にはばかられるような所でも構わず撮影しているという怪しさを見ると、ただ者ではない感満載。
見た目とやることのギャップに気づいてからは、「あ、ちょっとヤバイかも」と思うんですが、狙われた女性がそれを感じ取った時にはもう遅いんですよねぇ。
カメラを“武器”として周りの人間に近づく主人公の行動。
ヤバイ奴だと気づかれるかどうかの部分が非常にスリリングです。
美術や衣装はほんとカラフル。
技法的には「視点ショット(POV)」という主人公の目線=カメラアングルを多用。
そのことによって、鑑賞者である私たちが、この映画の主人公がターゲットとなる女性を覗き見ているのと同じような感覚に。
映画というもの自体がカメラの前で演じられる他人の生活を覗き見している要素もあるので違和感がないのと、ある意味“覗き見の覗き見“という、不思議な感覚をもたらしています。
主人公が変わった人だと、観客はなかなか共感できないものですが、この映画はそういった映画自体が持つ要素に近い部分があるのと、主人公自身をそこまで悪意がない人物として描いてあるので、良くも悪くも違和感がなく入り込めますね。
裏稼業のヌードモデル撮影、傷、幼少期のトラウマ…。
世間的にバレたくない、秘密にしておきたい…という人間誰もが持っている心理を見事に入れ込んで描いてあることが、今の時代に見ても普遍的で通じる部分として受け入れられているのかもです。
↓予告編
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