『ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる』(2019年 日本)
画像:リンクより
「最重要なこととは、この国で自主的に生きる試みのことだ」(映画より)
巨匠のアニメーション作家からロシアを知る
今朝の1日1映画はドキュメンタリー映画『ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる』(2019年 日本)を鑑賞。
ロシアを代表するアニメーション作家ユーリー・ノルシュテイン。
「話の話」「霧の中のハリネズミ」など数々の名作を生み出し、手塚治虫、宮崎駿、高畑勲監督ら日本の巨匠をはじめ世界中のアニメーション作家たちから敬愛されています。
彼は30年以上の歳月をかけて、ロシアの文豪ゴーゴリの名作「外套」のアニメーション作品を制作しているんですが、未だ完成に至っていない。
それどころか、近年は撮影が止まっている。
2016年6月、日本の撮影クルーのカメラはモスクワにあるノルシュテイン・スタジオ“アルテ”へ。
おびただしい数のフィルムや絵コンテのある作業場の中で、ノルシュテインの心境が自身の言葉で語られていきます。
私自身、広島国際アニメーションフェスティバルのお手伝いをしていたので、ユーリー・ノルシュテインという作家がいることは存じていました。
でも映画祭ってバタバタ忙しすぎて、上映に関わる部署以外は作品をじっくりと見る暇なく終わるんですよね(イベントスタッフの悲しき性(さが))。
このドキュメンタリーの中に出てくるアニメーションを見ながら、その細かすぎる手仕事に圧倒されています…。
日本のいわゆる商業アニメーションを見ていると、大ヒットと言われる作品でも背景はCGなどを使ってすごく細かい書き込みがなされているんですが、動きのある人物はベタ塗り+ちょっと影があるくらい。
ユーリー・ノルシュテインの描くアニメーションの人物は手作業で描き込んであり、表情筋の変化までが細かく動き、絵の人なのに、「体温」が伝わってくる。
それが画面全体に独特のあたたかさをもたらしていて、寒い日にたき火に当たった時やあたたかい飲み物を飲んだ時に感じられるようなホッとする癒しがあって。
途方もない時間をかけて作り出されるセルロイドの無数のパーツからなる紙人形のような絵を動かして作り上げていくという、物作り追求の仕方が半端ないです。
建築で言うと、スペイン・バルセロナで1882年に着工して140年経った今でも作り続けているガウディの“サグラダファミリア”の心意気と近い気が…(2026年には完成させるらしいですが)。
壮大なアニメーション作りについても感銘するんですが、それとともにロシアの作家におけるものづくりの根源が浮かび上がっているところが興味深くて。
「ソ連時代は苦しくなかった。今はルーブルが暴落し、お金の悩みが…」というノルシュテイン。
メドベージェフ露前大統領によるモスクワ(都市)の周りにモスクワ(都市)を作るプロジェクトのことや、ドストエフスキーの時代から変わらない、ロシアは金を渇望し、攻撃的な側面を持つことなどが語られ、なるほどーと思って。。
地下資源を持ちながらも極寒のため農地や海路が少ないという特性を持つ国が、いかに稼ぎ、国民がどう考えながら暮らしていて、どんな芸術表現につながっていくのかを垣間見ることができます。
『外套』の完成を、期待せずにのんびり待ちたいなと思います。
PS:コロナ前に友人と「ウラジオストクに2泊3日でカニを食べにいこう!」って呑気に言っていたあの頃が、今は夢のような状態に…。いつかまた平和な日が戻ったら行きたいなと思っています。
↓予告編
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