『それから』(1985年 日本)
画像:リンクより
夏目漱石の名作を森田芳光監督が独特の空気感で描く。
今朝の1日1映画は『それから』(1985年 日本)を鑑賞。
裕福な家庭に育った長井大助(松田優作)は30歳になっても定職を持たず、読書や思索にふける気ままな毎日を送る。
そんなある日、親友の平岡(小林薫)が会社を辞め、妻・三千代(藤谷美和子)とともに3年ぶりに東京へ帰ってきた…。
明治後期の東京を舞台に、親友の妻への愛に悩む主人公の姿を描いた夏目漱石の同名小説を、森田芳光監督が映画化した作品です。
先日見た森田芳光監督の『の・ようなもの』は明るくてにぎやかな作品でしたが、こちらはしっとりとした静かな作品。
セリフ回しも動きもゆっくりゆったり。
声が小さくて大助役の松田優作さんのセリフはところどころ聞き取れないので、めちゃくちゃボリュームを大きくしてしまいました。
偶然なのか、監督の演出なのか、主人公の心の動きが『の・ようなもの』の主人公と似ているんですよね。
気持ちや立場が揺らいでいる主人公が成長し、決意するまでを描いているところが。
ベースが文芸作品なので、会話としてナチュラルではないんですが、逆に説得力があって、心に残ります。
主演の松田優作さんは「太陽にほえろ」や「探偵物語」の熱くてクールなキャラクターが印象的ですが、この作品では真逆の、神経質で敏感な性格の主人公。
表情の奥に言葉にならない気持ちを抱えている感じが垣間見えて、とても合っている気がします。
(個人的には、この役の雰囲気がアン・ボヒョン(「梨泰院クラス」の悪役チャン・グンウォン役など)に似ている気が。←この方も演技がうまいですよねぇ)
友人の妻で病弱な三千代を藤谷美和子さんが演じているんですが、竹久夢二の美人画から抜け出してきたような雰囲気。
憂いを帯びた表情で、小声で「死ぬつもりで覚悟を決めています」って言われたら、もう何も言えませんわ…。
制作にあたっては、松田優作さんが大好きなロバート・デ・ニーロがデヴィッド・リーン監督の『逢びき』のリメイク『恋におちて』を撮っていると聞き、やってみたいという思いからだそう。
技法としては圧巻なのは長回し。
8分ぐらいあるのかな、対峙している人物の心の声を緊張感とともにじわじわとあぶりだしています。
カメラではなくキャストが台車に乗ってがカメラに向かって近づくズームで夢の世界のような雰囲気があって面白い。
また着物の配色や柄、置いてある切り花、セットの美術が洒落ていて、モダンなんです。
友人の妻を愛してしまう男性の複雑な心模様、女性の奥ゆかしさの中にある揺るがない信念。
登場人物の心の機微を読み取りながら見進めることができる作品です。
(北海道、青森の方、お気を付けください)
いつもご覧いただきありがとうございます♪
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