カトリーヌの「朝1日1映画」

朝の時間を有意義に♪

『どん底』(1936年 フランス)

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ゴーリキーの戯曲を映画化。
富める者と持たざる者の人生を描いた名作

今朝の1日1映画は『どん底』(1936年 フランス)を鑑賞。

どん底であえぐ泥棒ペペル(ジャン・ギャバン)と、最後の賭博に負けて無一文になり、貴族社会から墜ちた男爵(ルイ・ジューヴェ)が親しくなり…。

ソ連の作家ゴーリキーの戯曲を映画化。

帝政末期のロシア社会を1930年代のフランスに置き換え、木賃宿を舞台にどん底から這い上がろうとするペペルと男爵の生き方を対比的に描いたジャン・ルノワール監督による名作です。

私の祖父がジャン・ギャバンに似ていると言われていたと聞いて、どんな俳優さんだったのか見てみたい思いで鑑賞(確かに、似ている)。

中心となるのは泥棒ペペルと男爵の友情物語ではあるんですが、その周りの冷えた夫婦、こき使われている妹、それに言い寄る太った警部のやり取りが交差し、人間関係に駆け引きや複雑性があってちょっとサスペンス風でもあります。

中心人物の周りには、盗みや詐欺などをしてその日を何とかやり過ごしながら集まって暮らしている木賃宿に住む人々の姿が。

アコーディオンを鳴らしながら歌い、カードゲームに没頭。

お金はないけどコミュニティーがあり、一見楽しそう。

だけど、死と隣り合わせでもあって。

一方男爵は、もともとあった金を使い果たし落ちぶれていつの間にかこの木賃宿の住人に。

人間どん底過ぎても死と隣り合わせだし、裕福すぎても欲が人生をダメにするという、誰もが考えさせられるテーマを扱っています。

画としては奥行きのある構図が印象的。

冒頭では鏡への映り込みを利用して、空間に広がりを持たせてあります。

階段でのシーンでは下段から上段までに人物を段差を付けて配置することによって奥行きが出て、さらに狭い画角でも手前から奥、または奥から手前に動くことができる。

また、2階の窓枠の両サイドに人物を配置し、逆光で照らし、ズームで寄ると外にいる人々が窓枠の中心にフレームインしていくシーン。

これも本当に絵画的で美しくて。

ジャン・ルノワール監督は印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの次男で、幼い頃から父の絵のモデルをするなど絵画になじんていたことから、絵画的な画づくりというのがもう身に染みて分かっていたのかななんて想像したりします。

女優さんがかぶっているベレー帽、線のような細眉など衣装やメイクからも30年代を知ることができる作品。

黒澤明監督も同じ原作を江戸時代に置き換えた作品『どん底』(1957年)を撮っているということで、これもぜひ見てみたいと思っています。

ジャン・ルノワール監督の『ゲームの法則』も面白かったです。

↓予告編

 
 

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