『担へ銃』(1918年 アメリカ)
By ©1918 First National Pictures - Link
動きと表情で笑わせる天才
戦争という悲劇の中にある喜劇を描いた第一人者。
今朝の1日1映画は『担へ銃』(になへつつ)(1918年 アメリカ)を鑑賞
新兵訓練を受けるチャーリー。
ひとしきり身体を使ったストレートな笑いの後、舞台は前線へ。
ひょんなことで決死隊の一員となったチャーリーは、敵陣をなんと木に変装して“だるまさんが転んだ”よろしく動きまわるゲリラ作戦に出るのだったが…。
第一次大戦最後の年にチャップリンが放った傑作戦争諷刺コメディーです。
何も考えずに見て、身体を張ったギャグに笑えるシーンがたくさん。
それだけでも楽しめます。
ですが無声映画なので、この人は誰? とか、どういう関係性? とストーリーで見ようとすると、映っている「画」の中から見つけなきゃならない。
音楽はちゃんと効果音が入って分かりやすいんですが、字幕は直訳っぽくスッとは入ってこない感じで、なんとなく想像しながら見進めました。
ただこの映画は、この時代のアメリカがどういう状況にあって、登場人物がどういう関係で…ということを知ると、もっと深く楽しめるんですよね。
公開当時(1918年)は第一次世界大戦(1914年~1918年)の真っただ中。
反戦の思いが強く、兵役逃れを行っていると非難されていたチャップリンは、徴兵の登録はしたものの体重不足により不合格。
結果、戦争には行ってないんです。
そういう中で公開に踏み切ったこの映画ですが、画期的だったのは、それまでまじめなテーマとして扱われてきた戦争を「喜劇」として描いたこと。
戦争を笑いにするとは何事だ!と非難されつつも、戦争がもたらす「悲劇の中にある喜劇」を描いたことにより、兵隊経験者の観客に受け、チャップリンの映画出演66作目にして最高の興行成績を打ち立てる。
悲劇と喜劇は背中合わせとよく言われますが、たぶんこの映画がその元祖なんだと思われます。
登場人物も、敵はドイツの軍曹や士官や皇太子、女性はアメリカと協商国のフランスの娘など、戦争の状況と合わせてみると一気に分かりやすくなります。
印象的なのは、最前線で戦っているさなか、家族などから戦地に届く小包のシーンでは、チャーリーにだけ小包が届かない。
戦争で体験する悲しさや孤独を表現されていて、実際に戦争に行ったことのある人なら必ず共感するシーン。
笑いの中にふとした悲しみをさらっと入れ込むところがチャーリーのなせる業。
戦争の虚しさを嫌味なく訴える力のある作品です。
PS:アマゾンの配信映像は鮮明で綺麗です。
↓映画の一部分
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