『声もなく』(2020年 韓国)
闇の仕事を請け負う口の利けない青年が誘拐犯に…。
先の読めない展開にぐいぐいと持っていかれます。
今朝の1日1映画は『声もなく』(2020年 韓国)を鑑賞。
口のきけない青年テイン(ユ・アイン)と片足を引きずる相棒チャンボク(ユ・ジェミョン)。
普段は鶏卵販売をしながら、犯罪組織から死体処理などを請け負って生計を立てていた。
ある日、テインたちは犯罪組織のヨンソク(イム・ガンソン)に命じられ、身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒ(ムン・スンア)を1日だけ預かることに。
しかしヨンソクが組織に始末されてしまったことから、テインとチョヒの疑似家族のような奇妙な生活が始まる…。
貧しさゆえ闇の仕事を請け負う二人の男が、誘拐された少女を預かったことで予期せぬ事態に巻き込まれるクライムサスペンスです。
映画館で上映していた時に観たいと思いながら見逃していた作品。
これは面白いですねぇ。
見初めての印象は、犯罪映画なのにものすごく色味が明るくビビッドで、音楽も雰囲気ものんびり穏やか。
田んぼの緑に、自転車のカゴの鮮やかなグリーン、そしてイエロー、オレンジ、ピンク、パープルと色味の違う夕焼けが何度も出てきて、ゴールデンアワーの映画とも言えます。
その美的センスは女性監督ホン・ウィジョンならではなのかもしれないですが、韓国クライムならではの血まみれとか、痛い痛い!とかそういう激しい表現もちゃんと入れ込んであって見ごたえがありますね。
後半にかけては、その様相に暗雲が垂れ込めていき、二転三転とハッとするようなシーンがバタバタと襲ってきてまた別の引き出しが開かれていく。
それにしても主人公を口のきけない青年にしているのはシナリオとして秀逸だなあと。
犯罪者が主役なので、社会的には悪い人でそのままでは共感しづらいんですが、性格的にいい人の部分を描くことによって、「実はいい人」というギャップが生まれ共感を得ることができる。
口がきけない役というのは、実は正直者。
人間は嘘をつくときには大概言葉でつきますので。
口では嘘をついてもその視線、立ち振る舞いなどに本心が現れて、行動でバレちゃうんですよね。
犯罪を生業にしていても心はピュアという主人公を口がきけない青年にという設定にしたのはさすがだなと思います。
また、子役がいい。
ムン・スンアちゃんの悟りの演技というのでしょうか、11歳の子供だけど大人の状況を把握し的確に対応できる賢い子という役どころを巧な表情で演じていて、ただ者ではない感がありますね。
主人公のユ・アインはもう言うことない。
『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』(2008)でのかわいい青年の役から『バーニング 劇場版』(2018)やこの映画の寡黙な青年まで役によって七変化する姿が素晴らしく、今日本で活躍する俳優だと誰だろうと考えても思いつかないです。
「梨泰院クラス」(2020)での怪優ぶりが記憶に新しいユ・ジェミョンもコミカルな演技で見ごたえがある。
犯罪者と子供というと、『レオン』『万引き家族』などを思い出しますが、この映画はファンタジックでもあり、クライムでもあり、人間ドラマもあり、ブラックユーモアでもありと、いろんな要素をうまーいバランスで入れ込めてあって、今まであまり見たことのなかったタイプなんですよね。
子供の男女差別や人身売買など社会の闇をさらしている部分も鮮烈で、日本ではあまり描かれないだけに韓国映画の勇気のようなものも感じます。
緩急もあって最後まで引き付けるこの作品。
また一つ、新しい才能を発見してしまいました。
↓予告編
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