『瀧の白糸』(1933年 日本)
画像:リンクより
泉鏡花名作の溝口健二監督版(無声映画)を弁士入りで
銀幕の女王・入江たか子の美しさ
今朝の1日1映画は『瀧の白糸』(1933年 日本)を鑑賞。
明治23年頃、北陸一帯を巡業する見世物の中に、今評判の水芸の太夫"瀧の白糸"(入江たか子)がいた。
美人で勝気な男勝りで通っている白糸が、一日の興行を終え、浅野川の辺りでホッとした時間を過ごしていると、フトした奇縁で知り合った村越欣弥(岡田時彦)と思いがけない再会をし…。
泉鏡花原作、入江ぷろだくしょん制作(主演の入江たか子が新興キネマと提携して設立)、キネマ旬報ベスト・テンで2位に選ばれたサイレント映画時代の溝口健二監督による名作です。
昔、弁士・澤登翠さんの活弁付き上映会で見たことがあるんですが、水芸のシーン以外の話をほどんど忘れているので、今回は弁士・松田春翠による活弁で鑑賞。
戦前のフィルムだけに、ツーっと雨が降っているような傷や、2種類ある字幕の文字のうち1種類が見えにくいなどの難点はありますが、それらを活動弁士のナレーションやセリフが補っていて、見やすいです。
ストーリーとして面白いですねぇ。
男の立身出世を助けるために喜んで身を捧げ、自己犠牲を遂げる女性というのは溝口監督の描く女性のテーマの1つ。
東京に行った好きな男子学生の学費のため、「私に貢がせて」と、地方の旅先から稼いだお金を献身的に貢ぐ24歳の女芸人。
この構図って、あんまりよくない未来が待っていそうな予感がしますよね…。
この瀧の白糸さん、貢ぎに貢いだ挙句捨てられる運命にあるのかなぁと心配していたんですが、方向が違っていて、別の心配事が起きて、見ていていい意味で裏切られます。
好きな人と再会した時に、最大値となる皮肉が設定してある。
映画の醍醐味が詰まった作品ですね。
溝口作品の特徴である役者の動線を意識したカットやクレーンによる動きのあるカットも楽しめます。
これまで見た溝口作品と違うなと思ったのは、アップショットがわりと多いこと。
これまではミドルショットが多くてよく顔が見えず、「この役者さんは誰?」ということもしばしばだったんですが、入江たか子や相手役の岡田時彦(岡田茉莉子の父)の美しさがアップショットによりよく分かり、神々しい。
昔の役者さんって、フィルムの状態が悪くてもこんなに美しいのだから、実物はその数十倍美しかったんだろうと想像します。
昔の映画をいろいろ見ていくと、女心とか男心とか、今とそんなに変わらない。
遠い昔の時代の出来事とは思えなくって、共感してしまいます。
普遍的なテーマを映画いているからこそこうやって映画公開から89年経った今でも面白いんでしょうね。
PS:当時の裁判官の法服が刺繍が施してあってチャイナ服みたいです。
入江たか子さん、のちに「化け猫映画」で一世を風靡したんですね。そっちもぜひ見てみたいです。
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