『忍びの者 霧隠才蔵』(1964年 日本)
市川雷蔵が軽やかな動きで魅せる
日本映画に「縦の動き」を生み出した忍者映画
今朝の1日1映画は『忍びの者 霧隠才蔵』(1964年 日本)を鑑賞。
秀吉の死後、関が原の合戦で豊臣方を破って天下統一した家康(中村鴈治郎(2代目))。
その覇権を名実ともに確立するため、15年の長きにわたって機を狙い、深謀遠慮の末に大阪城に砲弾を撃ち込む……。
徳川方についた裏切り忍者と死闘し、さらに単身家康暗殺に赴き秘術を駆使する才蔵(市川雷蔵)の活躍を描く田中徳三監督によるシリーズ第4作です。
この映画のシリーズは第3作までは主役が石川五右衛門で市川雷蔵が演じていて、4作目以降は霧隠才蔵(きりがくれ・さいぞう)という忍者が主役で市川雷蔵が演じているという紛らわしさがあるようですが、この映画から見始めているのでサクっと見れました。
忍者映画はそんなに見た記憶がないんですが、任務遂行型のスパイ映画に近いものがありますね。
真田幸村に仕えた“真田十勇士”の一人の忍者・霧隠才蔵は基本的にクールで職人肌。
仕事に最善を尽くすため、恋はご法度だけど、揺れる男心みたいな。
そんな忍者を市川雷蔵が演じていて、権力争いの中で、反徳川の一手となり利用されながらも、「忍者が世の中を変えていきたい」と日々願っています。
健気に頑張っている姿は、スターだけど庶民的な雰囲気がある市川雷蔵さんにぴったり。
先日見た『大菩薩峠』のダークヒーロー机竜之助より、個人的には役柄としてこっちの忍者の方が断然合っている気がします(メイクも全然違うので別人のようです)。
忍者映画ということで、あらゆる忍びの術を披露しているんですが、中でもそれまでの日本映画にはあまりなかったと言われる「縦の動き」を生み出している。
宙を飛んでいたり、ロープでターザンのように舞い降りたり。
バク転しながら敵を欺き、もちろん刀や槍を使っての殺陣も見ごたえあります。
技法としては、光と影のコントラストが強め(キアロスクーロ)。
忍者という闇の存在を際立たせる手法として取り入れているんだと思いますが、それによって「ばれたらヤバイ」という緊張感が作り出されています。
また、「斜め構図」も多用。
陰謀の影や不安感を作り出すのに効果があります。
アクションが派手で、霧や煙、炎がすごい。
特に炎は本当に炎上している建物の中で撮影していて、多分ものすごい熱波の中で演じているのが心配になるくらいです。
今でこそCGなどでできますが、当時の役者さんって本当に体を張った演技をしていて頭が下がります。
権力との闘い、見ごたえのある忍者アクション、ほのかな恋。
「時代背景」「社会背景」「私的背景」の三拍子そろったバランスのいい映画ですね。
↓予告編