『この子の七つのお祝いに』(1982年 日本)
第1回横溝正史賞を受賞したミステリー小説を映画化。
歌と言葉の力強さ。
今朝の1日1映画は『この子の七つのお祝いに』(1982年 日本)を鑑賞。
次期総理の座を狙う大蔵大臣磯部の私設秘書・秦一毅(村井国夫)の元お手伝い・池畑良子(畑中葉子)が殺された。
ルポライター、母田耕一(杉浦直樹)は政界の謎をあばこうと秦の身辺をさぐっていた矢先の事件で秦の内妻、青蛾(辺見マリ)が奇妙な手型占いをするという噂をきく。
しかもその的中率に大物政治家、財界人等が続々と詰めかけており、秦自身もそのお陰で現在の地位を築いたというのだが……。
第一回横溝正史賞を受賞した斉藤澪の同名小説の映画化。
女性映画の巨匠・増村保造監督が、戦後の混乱によって人生の歯車を狂わされた女の悲惨な一生とその復讐を描いた作品です。
ずどーん。。。これはトラウマ映画ですね。
スプラッターのように血がドバドバ、並べられた日本人形、鎌のような刃物…。
単に怖いホラー映画ではなく、そこに母から子への歌と言葉による「呪い」が加わり、復習に燃える女性が出来上がります。
過去の回想をたくさん入れ込み、念仏のように繰り返す編集がされていて力強い。
ただ怖いのではなく、その背景をしっかりと描いてあるので非常に深みがあります。
だけど反対に、全体的なトーンとしては軽さもある。
80年代の角川映画特有のポップさがあるんですよね。
角川映画によく使用されたハンマーダルシマーの音色(金属製の弦の琴)の音楽がまた雰囲気があって。
お話は事件記者が謎を暴いていく探偵もののミステリーで、伏線がたくさんあってそれらをヒントに筋を追う流れではあるんですが、最後の方でどんでん返しのような展開になっていて面白い。
主演岩下志麻や母親役の岸田今日子の狂っていく演技は、先日見た同じ増村監督の『曾根崎心中』の梶芽衣子のような、思い込んだら周りが何も見えなくなって狂気の方向に一直線に突き進む女性像とかぶります。
アングルはほぼミドルショットで、2人か3人が画面の中に映っている状況。
それによって、感情で見せていくのではなく、「今どういう状況なのか」「なぜこうなったのか」「過去に何があったのか」を説明的なセリフと行動で見せていく演出がなされているような気がします。
ミステリー作品は観客も探偵になって事件を追うので、映っているものや登場人物の言葉から事の成り行きを推測しながら楽しむには、こういうアングルが適しているということなんでしょうね。
色は赤い着物、血、赤い照明と、赤を基調としていて、人間の情熱、強さ、興奮などの感情を呼び起こします。
「自分の映画の方法論は、近代的人間像を日本映画にうちたてるためのものだ」と語っていた増村保造監督。
第二次世界大戦の戦前~戦後に時代に生きた人が、時代に翻弄されながらどう生きたかを描いてある。
貧しさから這い上がる人々は情念や信念があって力強く、勇気をもらえますね。
↓予告編