『大菩薩峠 完結篇』(1959年 日本)
人間の“業”、そして“慈悲”とは。
日本映画史に残る名殺陣シーンを堪能。
今朝の1日1映画は『大菩薩峠 完結篇』(1959年 日本)を鑑賞。
甲府で夜な夜な起こる辻斬りは、神尾主膳の命を受けた机龍之助(片岡千恵蔵)の仕業だった。
龍之助を兄の仇とする宇津木兵馬(中村錦之助)は神尾主膳の策略により甲府城内に幽閉されるが、奉公人のお松の手により城を脱し、駒井能登守にかくまわれる。
神尾主膳は駒井能登守(東千代之介)を襲わせるべく、龍之助に名刀「伯耆の安綱」を手渡した。
能登守の目の前に現れ、兵馬と対峙する龍之助。
しかし龍之助は能登守も兵馬も斬らず、そのまま立ち去ってしまう…。
中里介山による新聞連載が28年続いたギネス級長編歴史小説を内田吐夢監督が映画化した完結篇です。
見終わって、ずっしり。
いやー、最後まで見ると、ただのチャンバラではないですね。
人間の“業”の深さを描いた仏教的、哲学的テーマを取り扱った作品だということが分かります。
これまで好き勝手に人を殺めてきた無敵の主人公が、目が見えなくなったことをきっかけに、欲深い殿様に利用されるようになる。
そのうち、自身が過去に行ってきた悪業や置き去りにしてきた息子の妄想に取りつかれていきます。
仇討ちを決め込んでいた兵馬も宿敵・龍之助の内心を理解しようとする。
慈悲とは何か。
許すとは何か。
これ、大きく見れば、死刑制度における加害者や、戦争の敵国をどうとらえるかということにもつながり、めちゃくちゃ大きなテーマなんですよね。
終盤、途中で終わっている感じなのは、この小説自体が作者の死去により未完のため。
この先が見てみたいと思わせる終わり方です。
シーンとして印象的なのは長回しの殺陣シーン。
今時の殺陣というと、カメラがマルチアングルのように動き回り、空中でストップモーションというものが当たり前ですが、この映画は全く違う。
妖気を放つ机龍之助(片岡千恵蔵)が、10人以上の敵を緩急のある凄まじい太刀さばきで切り倒していくんですが、動きのすべてを見せる舞台のような立ち回り!
カメラは全景を映しながら、ゆっくりバックしていき、龍之助は前へ進みながら、バッサバッサと斬り倒していきます。
カメラや編集の技術に頼らずこれだけ魅せる殺陣っていうのは、役者の演技の素晴らしさに他ならない。
さすが日本映画史に残る名殺陣だと言われているシーンだけあります。
第1部を見ただけの時は、人としてどうなの?! と思っていましたが、最後までみると全く違って、人間の奥深い描き方に魅了されました。
内田吐夢監督、すみません💦
他の監督による『大菩薩峠』もぜひ見てみたいと思っています。
第1部、第2部の記事はこちら↓