『大菩薩峠』(1957年 日本)
このキャラはヤバイ…。
内田吐夢監督によるニヒリスト剣士の活劇
今朝の1日1映画は『大菩薩峠』(1957年 日本)を鑑賞。
時は幕末。
甲州街道の大菩薩峠で巡礼者の老人を意味もなく斬殺した机龍之助(片岡千恵蔵)。
奉納試合の対戦相手である宇津木文之丞の妻お浜(長谷川裕見子)を犯し、試合で文之丞を殺すと、お浜を連れて江戸へ向かってしまう。
文之丞の仇を討つべく弟の宇津木兵馬(中村錦之助)は島田虎之助の道場で剣を学び、龍之助に戦いを挑むが、二人を止めようとしたお浜が誤って龍之助に殺されてしまう。
中里介山不滅の名作を柴英三郎と「母と子の窓」の猪俣勝人が脚色し、「暴れん坊街道」の内田吐夢が監督した作品です。
うーん、すみません、知識なく見ましたが、この主人公のキャラ、ヤバくないですか?
罪のない人を「刀の切れ味を試すため」斬り倒し、その「腕が鈍らないようにするため」に、通りすがりの人を次々斬り、妻は無理やり人妻を連れていき子を産ませ、子供の面倒は全く見ず酒を飲んでダラダラしている…。
どこかいいとこありました?
剣の腕以外、人としてダメな人なんですけど。
しかもどうやって稼いで食べてるのか分からない…。
職業的に盗人やスパイ、殺し屋などの悪業の人が主人公の場合、人として良い所が一つぐらいあるもんです。
だからこそ見ていて共感できる。
だけどこの机龍之助は全く良い所がなくて。
ダークヒーローと言えばその通りなんですけど。
まあ3部作の1部だけ見ただけなので、2部、3部ですごい展開が待っていて改心したりするなら別ですけどね。
で、映画ですが、この『大菩薩峠』は大人気小説で、日活の二部作(大河内傳次郎主演・稲垣浩監督)、東映の三部作(片岡千恵蔵主演・渡辺邦男監督)、この東映のリメイク三部作(片岡千恵蔵主演・内田吐夢監督)、大映の三部作(市川雷蔵主演・三隅研次監督/森一生監督)、東宝作品(仲代達矢主演・岡本喜八監督)と、たくさん映画化されています。
今回見たのが東映のリメイク版。
フィルムはアグファカラーを使っていて、色味がほんのりピンク掛かっている気もします。
主演の片岡千恵蔵さんが54歳の時の主演映画です。
中年の酒飲んでいつも横になってダラダラしているおじさんが急に剣術の時だけ凄腕を見せるという、逆に言えばコントのような面白さも。
セリフが低い声でゆっくりしゃべるキャラなんですが、ちょっと聞き取りづらい部分がありますね。
お浜に足元に抱き付かれたまま七人斬りぐらいをこなすという、とんでもない殺陣は見もの。
映画のテンポは非常にスローなので、ちょっと退屈ではありますが、殺陣のシーンだけスピーディーにしてあります。
女性の撮り方は、視線やしぐさ+セリフで葛藤や内心を表現するような場面が多く、女性や兵馬(中村錦之助)にはソフトフォーカスが掛けてあり綺麗。
お話的にいい所で終わっている感じがあるので(このままでは終われない…)、2部、3部と見進めようと思います。
↓予告編
第2部の記事はこちら↓
感結篇の記事はこちら↓