『第十七捕虜収容所』(1953年 アメリカ)
ミステリー+コミカルかつスタイリッシュ。
名称、ビリー・ワイルダー監督による舞台劇の映画化。
今朝の1日1映画『第十七捕虜収容所』(1953年 アメリカ)を鑑賞。
原作は、ナチス監視下のアメリカ軍捕虜収容所を舞台にしたブロードウェイのヒット劇。
皆の協力のもと、脱走を試みた2人の捕虜が射殺される。
仲間内から裏切り者がいるとの声が上がり、一匹狼のセフトンは真っ先に疑いの目を向けられる。
なんとか疑惑を晴らそうと、ドイツ軍のスパイ探しをするセフトンだったが……。
監督・制作ビリー・ワイルダーによる人間ドラマです。
面白いですね、この作品も!
ベースはミステリーなんですが、コミカルで声を出して笑えるシーンもあれば、非常にスリリングかつハードボイルド風でスタイリッシュ。
また戦争とは、ということも考えさせられる。
これだけの要素が盛り込んであるのに、とっちらからなくていい感じで着地する。
ビリー・ワイルダーってほんと何でもできますね。
舞台劇の映画化ということで、シーンは収容所の室内か屋外。
カメラは大体ミドルショットで、全体または5人ぐらいが映りこんでいるシーンが多く、彼らのやり取りで人間関係やキャラクターを見せていく群像劇となっています。
でもこれが見せ方が豊富。
三段オチみたいなお笑いの法則で、女優ジニーにほれ込んでいる男アニマルは何回も笑かしてくれます。
シナリオ的には「宙吊り」の法則も。
キャラクターがまず意図や警告、脅し、期待、不安などを表明し、それが「原因」となってそこから導かれる結果を観客が絶えず予測し続ける状態に置くこと。
「結果」が確認されるまでは観客の心をわしづかみにできるというもので、昨日見た『トイ・ストーリー』には視覚的に「宙吊りの絵」まで出てきました(通常はセリフで表現されますが、視覚的に表現されるというのはこれはある意味“第4の壁”を破る行為かも)。
結果の宙吊りによって、犯人予測をしていく過程で出てきて、「どうなるのー? 誰が犯人なのー?」と焦らされて予測しながら見進めてしまうんですよね。
それが素晴らしい演技力+めちゃくちゃかっこいい決めセリフで言われるからたまらんのです。
劇作家の三谷幸喜はビリー・ワイルダーを敬愛していて、芝居作りで行き詰ったらビリー先生の映画を見直すんだと言っていて。
確かに三谷幸喜さんの群像劇はキャラが立っていて、ビリー・ワイルダーの映画の世界に似ている気もしますね。
テーマ曲「ジョニーが凱旋する時」(アイルランド民謡)、シーンに出てくるオカリナ、口笛、バンドの真似、合唱など、音楽の使い方も絶妙。
いつ見ても、単純に楽しめると同時に、観客を楽しませる秘訣は何かを教えてくれるビリー・ワイルダー監督。
まだまだ見ていきたいです。
↓予告編