『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000年 アメリカ)
By May be found at the following website: IMP Awards, Fair use, Link
『ブラック・スワン』の監督による
「ダメ、ゼッタイ。」の様子が痛いほど分かる衝撃作。
今朝の1日1映画は『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000年 アメリカ)を鑑賞。
TV番組に出演するため、ダイエット薬を飲むうちに、その薬の中毒になった主婦サラ(エレン・バースティン)。
そして彼女の息子(ジャレッド・レト)と恋人(ジェニファー・コネリー)も、お金を得るために麻薬売買に走り、自らの体もドラッグに蝕まれていく…。
麻薬がどのように精神と体を破壊していくかを衝撃的に描いてあります。
朝からずどーん。。
この映画、気分が落ちますね…。
ヒーローも、悪役の敵も出てこないですが、麻薬という「目に見えない敵」と闘う人々。
明らかな悪役キャラクターを倒すというのだったら、分かりやすく描けると思うんですが、人間の内面の敵を描くのってかなり難しいなあと思うんです。
でもこの映画はそこをクリアしている。
どころか、見ていてしんどいくらい麻薬患者の気持ちが伝わってきます。
その手法として、徹底して役になりきる体当たりのメソッド演技(体重増減も)はもちろんなんですが、編集がすごい。
特徴的なのは「高速モンタージュ」。
麻薬を打つということが、麻薬患者にとってどのように世界が見えるのか。
その焦燥感や不安感を、麻薬を打ったり飲んだりするイメージカットを高速に入れ込むことによって見事に表現されていて、見ているこちらがドラッグをしているかのようにクラクラしてくるんです。
その他、ものすごく多くの編集技術が盛り込まれていて。
気づいただけでも、リピートカット、上下2画面、左右2画面、クイックモーション、ジャンプカット、魚眼、イメージの連鎖、タイムラプス、回転ズームイン&アウト、フェイスカメラ、ロングトラッキングショットetc…。
ほんと、技法の見本市です。
この映画、カット数が2,000以上。
100分の映画で平均が600~700カットといいますから、脳がすごいことになるはずですわ…。
この編集は「ヒップポップモンタージュ」とも言われるそうなんですが、ロシアの古典映画「カメラを持った男」(1929)からのアイデアも。
その他、今敏の1997年のアニメ映画「パーフェクトブルー」に触発されたシーンもあり、見ごたえはあります。
もうね、麻薬をやると、こんな感じになってしまいますよ、という啓発映画としてはとても効果のある映画だと思うんですけど、過激な描写もあるので難しいのかな(PG12)。
小説が原作で、人間の心境や内面を描く映画化作品としては非常に再現力の高い映画だと感じます。
↓予告編