『波止場』(1954年 アメリカ)
By Illustrator unknown. "Copyright 1954 – Link
アカデミー賞8部門受賞
名作にはたくさんの要素が詰まっています。
今朝の1日1映画は『波止場』(1954年 アメリカ)を鑑賞。
元ボクサーの青年テリーは、現在はギャングのジョニーが支配するニューヨークの波止場で働いている。
ある日、テリーと兄チャーリーはジョニーに命じられ、殺人事件に関わってしまう。
やがて被害者の妹イディと知り合ったテリーは、兄の死の真相を追求しようとする彼女に心惹かれていく。
イディに感化され、自らの信念に基づいて生きることに目覚めるテリーだったが……。
『ゴッド・ファーザー』のマーロン・ブランドが30歳の時の主演映画で、アカデミー賞8部門受賞の社会派ドラマです。
いやー、いい映画ですねー。実に説得力がある。
まず根底にあるのは、役になりきるという「メソッド演技」。
登場人物にどういう過去があり、どういう性格によりそのように行動し発言し、そういう結果をもたらして生きているか。
そこが徹底して演技に表現されています。
主演のマーロン・ブランドは役になりきるために、波止場に出向いて港湾労働者の仕事を学び、ボクサーらしいフットワークを習得するためにボクシングジムでトレーニングをしたそう。
確かにパンチなどボクシングの基本フォームが本格的なんですよね。
それから役を表現したシナリオ。
テリーを好きになる女性イディ(エヴァ・マリー・セイント)の性格の表現が良くて。
子猫を次々拾ってくるんですが、それらがいつも怪我をしていたり、弱っていたりする猫。
「他人の悩みは自分の悩み」というセリフも。
テリーに自分の兄を殺されたかもしれないのに、ハリネズミのように周りをけん制しながら生きる青年テリーの内面を理解し、彼を包み込むやさしさを持っていることを行動やセリフで表現してあって、ちゃんと女性の内面を描いてあります。
また、テリーは元ボクサーということで、演出も主要部分がボクシングのタイトルマッチのようになってるんですよね。
彼の人生そのものにボクサーの試合をダブルイメージのように重ねてあって。
これらのシーンを気づいたときに、うわー、シナリオが練られてるなと感じました。
真実を追求する神父の存在、目線を表現したカメラワーク、波止場での人間の存在の小ささが伝わる対比的な構図、ハトやネコなどの小動物を命の象徴として入れ込む、音楽で感情を表現など、映画のお手本のような技術の数々。
つくづく思うのは、昔の映画って、私にとっては新しく、初めて見るものなので、逆に新鮮なんですよね。
常に発見があり、観るのが楽しい。
この映画はかなり勉強になります。
↓予告編