『ジェシー・ジェームズの暗殺』(2007年 アメリカ)
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微妙な表情の変化から心理を読み取る&
撮影監督のこだわりの絵作り
今朝の1日1映画は「ジェシー・ジェームズの暗殺」(2007年 アメリカ)を鑑賞。
南北戦争(1861-65年)後、仲間を率い、25件以上の強盗と17件もの殺人を犯した重罪人でありながら、民衆からは英雄とさえ称えられた男、ジェシー・ジェームズ。
彼を暗殺した手下、ロバート・フォードの人物像に迫るサスペンス・ドラマです。
第64回ヴェネツィア国際映画祭でジェシー・ジェームズを演じたブラッド・ピットが男優賞を受賞。
第80回アカデミー賞ではロバート・フォード役のケイシー・アフレックが助演男優賞に、撮影監督ロジャー・ディーキンスが撮影賞の候補になった作品です。
中盤ぐらいまでは登場人物の整理が必要な感じでしたが、中盤以降は心理戦のやりとりがすごくて食い入るように見てしまいました。
西部劇チックな内容ではありますが、ドンパチやる派手な感じではなく、撃つか撃たれるかの駆け引きを、その微妙な表情の変化やセリフの裏を読み取っていく感じ。
アクションを期待したら裏切られるんですが、心理を読むのが好きな人にはハマる映画なんじゃないでしょうか。
私は心理描写を読み取るのが好きな方なので、場の空気感を一瞬で変えていくブラピのセリフ、表情、間(ま)の取り方にウォーっと一人唸っていました。
カッとなったら笑いながら殺めてしまいます。
その共感力の無さや残虐性とともに、ドキっとする話術や人間として非常に魅力的な部分も持ち合わせていて、その裏と表の気持ちの揺れをブラピが非常にうまく演じてるんですよね。
ロバート・フォードは憧れの存在であったジェシー・ジェームズに近づきすぎて、ちょっとした返答をきっかけに殺意を抱いてしまう
「ファンとして好意を寄せる→対象者と同一視→幻想が崩れる→攻撃に代わる」様子が描かれていて、いわゆるアイドルとかスポーツとかにもある「アンチ化」と同じ心理が働いているよう。
それは自我防衛機制でもあり、自分の気持ちを平静に保つための行為とも言えます。
ラストに向かってまた一波乱あるんですけどね。
技術的には、「ローライト」を得意とする撮影監督ロジャー・ディーキンスの生み出す光と影の効果が非常に美しい。
有名なのは、闇夜に走る列車を強盗しようとするシーン。
列車のライトに照らされながら命がけの行為に出る、緊張感と不穏さが漂うジェシーのシルエットに彼の生き様が反映されています。
その他古いカメラのような、フレームの境界の周りにぼやけた効果のあるシーンが。
この映画のために多くのテストを重ねた技術により、メランコリックな風景を生み出しています。
カラーは黒(衣装)と白(雪)、黒(衣装)と茶(麦畑)が多様され、アメリカの原風景を描くアンドリュー・ワイエスの絵画のような配色に。
小道具は蚊や蛇などの生き物の使い方もエッジがきいていていんですよね。
美的センスあふれるこだわりの映像も見ごたえがあります。
演技と美術をじっくりもう一度見直したいです。
↓予告編