「夫たち、妻たち」(1992年 アメリカ)
Fair use, Link
「手持ちカメラ」で男女の人間性をあぶりだす
今朝の1日1映画は「夫たち、妻たち」(1992年 アメリカ)を鑑賞。
不協和音を奏でるカップルの愛の行方を、ウディ・アレン監督がシニカルかつリアルに描いたドラマ。
夫はカレッジで文学を講じ、妻は美術関係出版社のキャリア・ウーマン。
ゲイブ・ロス(ウディ・アレン)とジュディ(ミア・ファロー)の夫妻は、マンハッタンの知的エリート層を象徴するようなカップルである。
ロス夫妻には、気心の通じた親友のジャックとサリー夫妻がいた。
今夜はかねてから予定の四人での会食の日。
ところが、ジャック達が集まるなり、彼らの口から意外な言葉が飛び出した……。
いやー、リアルだわー。
これ、ドキュメンタリーですか? というくらいのリアルさ。
演じているのは、当時実際に交際していたウディ・アレン監督&ミア・ファロー。
ウディ・アレンは自分の私生活を映画化しているとも言えなくもないんですが、夫婦や恋人たちが普段している会話+ドキュメンタリータッチな構成が非常にリアルで。
シーンの登場人物がずーっとしゃべっているような会話劇を作るっていうのは、メタ認知能力というか、自分や周りに起こっている事柄を見て客観的分析する力に長けているんだろうなと感じます。
大人の恋愛を描いているわけなんですが、それなりに年齢を重ねた方ならうなずけるところがたくさんある気が。
男女の思い違いやすれ違い、相手を傷つけるつもりじゃなかったのに傷つけてしまう、逆にその気にさせるつもりじゃないのに気に入られてしまうなど、あるあるが詰まっています。
ゲイブはジュディのことを「受動的攻撃型ですべてを手にする女」っていう表現をしていて、コロコロと男性はその手に転がされるんですが、同姓の女性から見たらいわゆる「カマトト」と言われるタイプ。
その他にも男性について「キツネ型」「ハリネズミ型」と分析する女性、占いの話とフィットネスに夢中な女性、小説家志望の女性など、それぞれの人間性をあぶりだして男女の関係性をグラグラと揺さぶるシナリオが面白さに輪をかけます。
この自然な雰囲気を技術的に見せているのが、手持ちカメラ(ハンドヘルド)。
三脚を取り外し、手持ちで被写体を追う方法は、撮影者自身が被写体に同化するような効果があります。
これまでのウディ・アレン映画はカメラアングルにこだわり、事前準備にも相当時間をかけて撮影していたようですが、この映画では三脚、ドリーなどすべて取っ払い、内容だけに特化するため手持ちに。
手持ちカメラは手振れで不安定な動きになるんですが、それによって2組の夫婦の心の揺れ動きをリアルに写し取ることにしたとのこと。
その分、長回しになり、演じる方も舞台の芝居くらいの長セリフになり大変ですが、カットで細かく演技を切るよりも、逆に役者のエネルギーがそのまま表れフィルムに記録されて、映画として相乗効果になっています。
こういう作品、結構好きです。
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